ユニークな商品構成と「何があるかわからない」体験で若者を中心に人気を博してきたヴィレッジヴァンガードが、大幅な事業再編に乗り出した。2023年3月期の連結最終赤字が42億円に達したことを受け、全国で81店舗の閉鎖を決定。個性を追求するが故の経営課題が表面化した形だ。カルチャー系小売業の雄は、いま大きな転換点を迎えている。

経営悪化の背景と決断
ヴィレッジヴァンガードを運営するヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、2023年3月期の連結決算で42億円の最終赤字を計上しました。この深刻な経営状況を受けて、同社は全国の81店舗を閉鎖することを決定しました。閉鎖店舗は採算性の低い店舗を中心に選定され、2024年3月までに段階的に閉店する見込みです。
人気店舗なぜ赤字?根本的な課題
「いつ行っても新発見がある」という独特のコンセプトで、書店ながら文具、雑貨、サブカルチャー商品までを取り揃えるそのスタイルは、一定の顧客を惹きつけてきました。しかし、各店舗が独自の商品構成を持つという「店舗個別主義」が、在庫管理の複雑さや効率性の悪さを招いていた面があります。多品種少量仕入れの繰り返しが、コスト圧迫の主要因となっていました。
さらに、コロナ後の物価高騰や消費の冷え込みが追い打ちをかけ、特に地方の中小規模店舗の採算が急速に悪化。SNSで話題になる大型店舗の成功陰で、多くの店舗が苦戦を強いられていました。
再建戦略と今後の展望
同社は店舗閉鎖に加え、以下のような経営改革に乗り出しています:
- DC(配送センター)の集約:分散していた物流網を見直し、在庫管理の効率化を推進
- オンライン戦略の強化:ECサイト「ヴィレッジヴァンガードオンライン」の機能拡充とSNSとの連動強化
- 旗艦店へのリソース集中:大都市の大型店舗を核とした集客モデルへの転換
- プライベートブランドの拡大:自社開発商品の比率向上による利益率の改善
これらの施策により、2024年度下期までの経営再建を目指すとしています。
まとめ
ヴィレッジヴァンガードの大規模店舗閉鎖は、個性重視のビジネスモデルが直面する現代的な課題を示すケーススタディと言えます。なぜなら、独自性を追求するあまり在庫管理やコスト効率が悪化し、物価高騰という外部環境の変化に対応できなかったからです。例えば、店舗ごとに異なる商品構成は顧客にとって魅力ですが、仕入れ・在庫管理の面では非効率で、収益性を低下させる要因となりました。したがって、同社の再生には「個性」と「効率性」という一見相反する要素を如何に両立させるかが鍵となるでしょう。今後はオンライン戦略や旗艦店機能強化によって、新たなバランスを見いだせるかが注目されます。
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